Beatrice Närhi ja Raino - Scenic Resemblance (sample)

by Jade Visions

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	1.	Witch's Wand 01:52
	2.	Witch's Wand (Raino's piano solo) 01:55
	3.	Synnyinmaa
	4.	Synnyinmaa (Raino's piano solo)
	5.	Moonless Cave 02:56
	6.	Moonless Cave (Raino's piano solo) 01:28
	7.	Fire within
	8.	Fire within (Raino's piano solo)
	9.	Kerrankin Puhkeaa
	10.	Kerrankin Puhkeaa (Raino's piano solo)

about

ベッドルームレコーディングの自由を心任せに謳歌する妹の静謐なトラックを、音楽大学で専門性の高い教育を受けた兄のピアノが合間を縫うようにトレースしながら、アルバムは進む。

フィンランドのビートメイカー／ヴォーカリスト、ベアトリス・ナルヒによる通算4枚目となる新作は、その素朴なメロディを即興でソロピアノに置き換えたという兄、ライノの余興の所産とコラボレーションするというフォルムで新たな地平での共鳴を嗅ぎ取る。

『全ての音を自分の納得いく位置に正確に配置し、組み上げていった』というベアトリスに対し、『半ば遊びのつもりだったんだけど──全ての曲を初めて聴いたその直後に聴いたそのままのイメージを膨らませながら即興で演奏したんだ。妹のように全てを計算づくで作り込むのは性に合わないからね。どんな音も危ういくらいが丁度いい』とライノ。

ベアトリスの完全性とライノの不完全性──その回路をたどるプロセスがこのアルバムを支えている。

完全な音楽の核の後を不完全な音、今創られる音≒生成としての音楽が追いかける。絶えざる逃走／追跡を契機として展開されるパラレルな二つの世界が聴者の意識の空白を突くようにして交錯し、完全性と不完全性は対として置く二項などではなく、相補的な位置関係にある、ということを多くのレシ(物語)を付着させながら語り尽くす。

たとえば水は、氷に対する微温的な存在の様態を示唆している。と同時に水の流動性は、とある冷却に結晶し、氷となる。

この対応は、硬化した世界の寓意を含む妹の完全性が、兄の兄であるがゆえの微温的眼差しを受け、不完全な流動的世界へと溶解する今作をアレゴリカルに──いみじくもiceとrainという語をそれぞれの名に内包するふたりの織り成す豊稔が──示唆してはいまいか。